大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)1672号 判決

控訴人・附帯被控訴人

株式会社書泉

右代表者代表取締役

酒井正敏

右訴訟代理人弁護士

笠原喜四郎

被控訴人・附帯控訴人

書泉労働者組合

右代表者執行委員長

野中保夫

被控訴人・附帯控訴人

原雄次

(ほか一五名)

被控訴人

大藪平太

(ほか一名)

右被控訴人・附帯控訴人ら訴訟代理人弁護士

芳永克彦

内藤隆

主文

一  本件各控訴及び本件各附帯控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の、附帯控訴費用は附帯控訴人らの各負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  昭和五七年(ネ)第一六七二号控訴事件

1  控訴人(附帯被控訴人)

(一) 原判決中控訴人(附帯被控訴人、以下単に「控訴人」という。)敗訴部分を取り消す。

(二) 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

(三) 訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人らの負担とする。

2  被控訴人ら

本件控訴を棄却する。

二  昭和五七年(ネ)第三〇三九号附帯控訴事件

1  附帯控訴人ら

(一) 原判決中、附帯控訴人ら(被控訴人前田隆承及び同大藪平太を除く被控訴人ら。なお以下被控訴人らといい、附帯控訴人の表示を省略する場合がある。)に関する部分を次のとおり変更する。

控訴人は附帯控訴人らに対し、それぞれ原判決別紙「原告請求金額一欄表」のうち各附帯控訴人欄の「請求損害金額」欄及び「遅延損害金額」欄記載の各金員を支払え。

(二) 訴訟費用は、第一、第二審とも控訴人の負担とする。

2  控訴人

(一) 本件各附帯控訴を棄却する。

(二) 附帯控訴の費用は附帯控訴人らの負担とする。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決の事実摘示中「第二当事者の主張」欄(原判決四枚目表六行目から同三九枚目表四行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決四枚目裏一〇行目「代表者」を「当初の代表者」と改め、同「関口武男」の次に「、現在の代表者執行委員長野中保夫」を加える。

二  同五枚目裏三、四行目「秋山義憲」を「秋山良則(通称義憲)」と改め、以下の「秋山義憲」の記載をすべて「秋山良則」と改める。

三  同三六枚目表二行目末尾「知らない。」の次に「特に訴外橋本秀昭が争議行為に関係して、刑事処分を受けた事実については、控訴人はまったく知らなかった。」を加える。

四  同三九枚目表四行目末尾「すべて争う。」の次に「被控訴人組合のピケストは、入り口の物理的封鎖や社員の出社阻止、商品・備品等の破壊、店舗への泊まり込み、顧客の負傷等を一切伴わず、したがって、平和的説得の範囲を出ていないから、違法な争議行為ではない。」を加える。

第三証拠関係(略)

理由

第一  当裁判所も、被控訴人らの請求は、原判決が認容した限度において理由があり、これを認容すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決の理由説示(原判決四三枚目表二行目から同一一〇枚目裏九行目まで。引用にかかる別紙「原告請求金額一覧表」、「認容金額一覧表」及び「成立を認定した書証一覧表」を含む。)のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決別紙「成立を認定した書証一覧表」を別紙(略)「書証一覧表の付加、削除表」のとおり付加、削除する。

二1

2  同四六枚目裏一行目「入口ドア」の次に「やショウウインドウ、外部に面したガラスに」を、同八行目末尾「阻止した。」の次に「このように争議中は両店ともおよそ書物の販売をする書店の雰囲気ではなく、顧客に入店して本を購入しようとの気持を抱かせるものではなかった。したがって、ピケストが張られると、被控訴人組合員らが直接顧客に手をかけることまでしなくとも、入店する顧客はまったくといっていいくらいなかった。」を加える。

3(一)  同四七枚目表四行目末尾「なかった。」の次に「ピケスト期間中の僅かな売上は、そのほとんどがいわゆる外商によるものであり、これまでの顧客からの注文による店外での販売であった。」を加える。

(二)  同四七枚目裏二行目末尾「出すに至った。」の次に以下のとおり加える。

「控訴人の確定申告書(〈証拠略〉)によって、年間の全体の収支をみても、昭和五一年九月から同五二年八月までは、八一九七万一〇五四円、同五二年九月から同五三年八月までは、争議行為の期間に一部かかったとはいえ、七四九万七二三七円の各経常利益を上げていたのに対し、同五三年九月から同五四年八月までの決算は、一億五一六七万三九〇一円の経常損失となった。」

4  同四八枚目表末行「昭和五一年」から同裏三行目末尾「話した。」までを、次のとおり改める。

「履歴書も示し、それまでの経歴、労働争議との関わり、その対応策等について話し、本件争議についても、自分達にまかせてくれれば、種々の手段を講じて、控訴人が前記両店舗で営業が再開できるようにしてやるとの趣旨の話しをした。」

5  同四八枚目裏一〇行目「前記前歴」から同枚目末行末尾「ことにした。」までを「これまでの経歴も考えると、営業の再開ができるかも知れないと考え、その申し入れを受け入れ、その仲間の力を借り、実力をもってしても、被控訴人組合の妨害を排除し、両店舗での営業再開を計ることにした。」と改める。

6  同四九枚目表九行目末尾「任せた。」の次に改行のうえ「3」として以下のとおり加える。

「3 (証拠略)中、右1、2の認定に反する部分は前掲各証拠と対比して措信できず、他にこれを左右するだけの証拠はない。」

7(一)

(二)  同五一枚目表六行目「認められ、」を「認められる。」と改め、同行目「右認定」から同六、七行目の「証拠はない。」までを削除する。

8  同五六枚目表六行目の「原告組合」の前に「当時の」を加え、同裏八行目末尾「原告」から同一〇行目「取り囲み」までを「グランデ店七階の休憩室から、会社臨時従業員らによって追い出された被控訴人組合員らが、帰ろうとしてエレベーターのある六階に向かおうとしたところ、その通路の両側に並んでいた会社臨時従業員らは、被控訴人組合員らを取り囲み、なかでも被控訴人原に対しては、」と改める。

9  同五九枚目表三、四行目「午後五時」から「翌三日、」までを「及び翌三日の夕方、」と改める。

10  同六〇枚目表末行「逃げ遅れた」から同裏二行目末尾「働いた。」までを次のとおり改める。

「逃げ遅れた被控訴人組合員らを取り囲み暴行を加えたが、特に被控訴人佐々木に対し、つまさきや膝等でその足を蹴りつけ、左下腿部に膝蹴りを加え、そのため転倒した同人の背中等をくりかえし足で蹴り、また、被控訴人山本に対し、その右足脛等を足で蹴り上げる等の暴行を加えた。」

11  同六一枚目表六、七行目「原告和田」から「暴行を加えた。」までを次のとおり改める。

「支援労働者らを両側から包囲するような形で迫り、殴る蹴るの暴行を加えたが、特に被控訴人和田に対しては、同人の両腕をつかんで集団から引っ張り出し、両足の脛を数回強く蹴飛ばし、また、被控訴人三田義樹の胸を手拳で突き、足で同人の左膝付近を数回蹴り上げた。」

12  同六六枚目表一〇行目「右下脚部」から「足蹴」までを「胸部を膝蹴り」と改め、同末行「顔面」から「を殴打」までを「頸部、右肩部、上腕部を肘打ちし、両大腿部を足蹴に」と改め、同枚目裏二行目「及び右大腿部」を削除する。

13  同六七枚目裏三行目「足蹴にする、」の次に「後襟首をつかんで引きずり廻す、」を加える。

14  同六七枚目裏一〇行目「会社臨時従業員」の前に「訴外斉藤滋寿ら」を加える。

15  同六九枚目表一、二行目「その腹部を蹴り上げ、」を「、後からはがいじめにしたうえ、数名で前からその顔面を手拳で殴打し、さらに倒れた同人を殴ったり、蹴ったりし、」と、同三行目「その胸部を」を「その胸部に膝蹴りを加え、そのため転倒した同人からカメラを奪おうとして」とそれぞれ改め、同四行目「原告三田敬」の前に「右野中に対する暴行を止めるために間にはいった」を、同裏六行目「原告三田敬は、」の次に「全治まで二週間以上を要する」をそれぞれ加える。

16  同七〇枚目表一行目「妨害される」を「妨害された。」と改め、以下「とともに」から同二行目末尾「支払った。」までを削除する。

17  同七一枚目表一行目冒頭「会社臨時従業員」の前に「訴外斉藤滋寿、同松島成佳ら」を加える。

18  同七一枚目裏一〇行目「一一万〇二〇〇円」を「一一万円(付属品とも)」と、同末行「左腕をねじり上げ」から同七二枚目表一行目「殴打する」までを「両腕を押さえて身動きできないようにしたうえ、正面からその胸部を蹴り上げ、さらに頭や下腿部を手拳で殴打、足で蹴飛ばす」と改める。

19  同七四枚目表三、四行目「原告山本に対し、」の次に「膝蹴りを加えたうえ、手拳で殴りかかり、さらに」を加える。

20  同八三枚目表三行目及び同九行目冒頭の各「原告組合」の前に「当時の」を加える。

21  同八四枚目表九行目の次に、改行のうえ「3」として以下のとおり加える。

「3 (証拠略)中、以上1、2の認定に反する部分は前掲各証拠と対比して措信できず、他にこれを左右するだけの証拠はない。」

三1  同八五枚目裏六行目「申込みがされ」の次に『、これに対して三月中旬ころではあるが「団交の場を持つことを考えよう。」との回答もされ』を、同八六枚目表一行目「伝わっており、」の次に「また弁護士を立てて団体交渉の申入れをした翌日のことであるうえ、その交渉事項も右二七日のそれと異なるものではなかったと推認されるから(〈証拠略〉)、」をそれぞれ加え、同行目「この点」を「これらの点」と改め、同二行目末尾「できない」の次に「(なお、その後において、控訴人が団体交渉の申入れに誠実に対処せず、そのため被控訴人組合の団体交渉権が侵害されたとしても、そのことは本請求とは別の問題である。)」を加える。

2  同八六枚目裏末行「顧客を対象とし、」の次に「被控訴人組合員の倍を越える従業員が店内で就労しているのに、顧客に対する呼びかけやビラの配付に止まらず、スローガン等を掲げた横断幕、ステッカー、ビラ等をショウウインドウ、出入口ドア等に張りめぐらし、顧客が自由に出入して購入したい本を物色する書店の雰囲気ではない状況にしたうえ、」を、同八七枚目表二行目「対しては」の次に「、入り口付近にたむろする被控訴人組合員らが」を、同二、三行目「ものであり、」の次に「およそ顧客に店に入ろうとの考えを抱かせないピケストであって、」をそれぞれ加える。

3  同八七枚目表五行目「(証拠略)」を「前掲各証拠」と、「一億円以上」を「多額」とそれぞれ改め、同八行目末尾「いわざるをえない。」の次に以下のとおり加える。

「(人証略)中には以上の認定に反する部分があり、また、(証拠略)中には、争議が長引き控訴人の損失が拡大したのは、団交拒否、代表者の不出頭、被控訴人組合の言い分に耳を傾けない控訴人の態度等一方的に控訴人側の対応のしかたが原因であるかのような部分があるが、前掲各証拠及び前記認定(付加、訂正、削除のうえ引用した原判決(以下「原判決」という。)理由欄三冒頭掲記の各証拠及び三1の認定事実)と対比すると、右認定を覆すに充分ではなく、他にこれを左右するだけの的確な証拠はない。」

4  同八九枚目表三行目「とおりであり、」の次に「顧客の入店を実力で阻止しようとしたわけでもなく、」を加える。

5  同九一枚目裏七行目「昭和五一年ころ」から同八、九行目「知りながら、」までを「争議行為等に関連してこれまでに果たしてきた役割等を承知のうえで、」と改め、同九二枚目表三行目末尾「とおりである。」の次に以下のとおり加える。

「そして、原判決理由欄四冒頭掲記の各証拠及び右四の認定事実によると、控訴人会社の幹部らは、会社臨時従業員らが被控訴人組合員らに対し暴力を加え、その他違法行為をしていることを、直接見聞し、あるいは被控訴人組合からの通告等により、充分承知していたにも拘らず、これを止めさせるような措置をまったく採らなかったことも認められる。

もっとも、当審証人橋本秀昭、同秋山良則の各証言中には、被控訴人組合員らの住居地やその実家での各違法行為については関知しない旨述べる部分もあるが、前認定(四2の(四)(1)、同(五)、同(一六)(2)、同(一九))のとおり、その違法行為の内容・手段の共通性、ステッカー、落書等の中身、行われた時期が一致していること等に照らすと、前記各違法行為は会社臨時従業員によるものと認定するに充分であって、前記各供述は措信できない。」

6  同九四枚目表二行目「その状況」を「その一方的で、空手、拳法の手法による執拗な暴行の態様、被害の状況」と改める。

7  同九六枚目裏六行目「侵害して」を「侵害し、以後被控訴人組合員らがこれを恐れて、組合活動を控えるよう」と改める。

8  同九七枚目表一行目末尾「理由がない。」の次に以下のとおり加える。

「もっとも、控訴人は、被控訴人側も暴力を振るったとして、(証拠略)を提出する。そのなかには、昭和五四年四月の会社臨時従業員の傷害に関する診断書も見受けられるが、原判決四冒頭掲記の各証拠及び右四の認定事実からすると、被控訴人側が会社臨時従業員に対し積極的に暴力を振るったとは認められず、逆に会社臨時従業員の攻撃的行動からすると、暴行の過程で右程度の傷害を負うことも考えられないではなく、右各証拠は右1、2の認定の妨げとはならない。」

9  同九八枚目裏末行「四2の(一九)」の次に「(但し、(1)を除く)」を加える。

第二  以上のとおりであって、被控訴人らの控訴人に対する本訴請求は、原判決「別紙認容金額一覧表」の「認容金額」欄記載の金員及び同表の「遅延損害金額」欄記載の金員(その起算日がいずれも不法行為後の日であることは明らかである。)の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容すべきであり、その余は失当としてこれを棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であり、本件各控訴及び本件各附帯控訴とも理由がないから、いずれも棄却することとし、当審での訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大西勝也 裁判官 鈴木經夫 裁判官 山崎宏征)

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